フラミンガム研究をはじめ,国内外で多数のコホート研究がさまざまな危険因子を明らかにするために実施されています。
そのなかでも世界に誇る規模で行われているの研究に,国立循環器病研究センターが1989年から実施している吹田研究があります。
この研究は久山町研究、端野・壮瞥町研究、大迫研究などと異なり。都市部の研究という点でユニークです。
きょうは、同センター予防健診部医長の小久保喜弘先生が5月21日,東京都内で開かれた健康日本21推進フォーラム(理事長=自治医科大学学長・高久史麿氏)の総会で講演した記事で勉強しました。
##「危険因子は時代とともに変化」国循・小久保氏が吹田研究を解説 健康日本21推進フォーラ総会で
#定点観測のように危険因子の監視を
わが国� �,第二次世界大戦前後で死因の構成割合が大きく変化している。
戦前は感染症が大部分を占めていたが,ペニシリンなど抗菌薬の登場によって戦後には激減した。
これによってわが国は世界でも有数の長寿国となったものの,その一方で脳卒中や虚血性心疾患が増加。
さらにその後は,がんが増加の一途をたどっている。
グレートフォールズ、MTの病院
この点について,小久保氏は「戦後に脳卒中,虚血性心疾患が増えたのは抗菌薬の発明があったからで,がん増加の最大の要因は高血圧対策がもたらした長寿」と説明。
また,疾患とともに国民の生活習慣も変化していることを指摘し,「危険因子は見つかったら未来永劫不変というわけではなく,時代とともに変化していくもの。どう変わっていくかを把握し,公衆衛生や社会学に従事する人々は定点観測のように見ていかなければならない」とした。
ここで重視されるのがコホート研究だが,わが国を含め,これまで都市部を対象とした著名なコホート研究は少なかった。
それは,人口の移動が激しいため,対象者の追跡が困難だからだ。
しかし� ��多くの人が都市部で生活している現状(国民の3分の2が都市部在住)を考えると,都市部におけるコホート研究の意義は非常に大きいだろう。
大阪府吹田市は,大阪北部の人口35.5万人都市で,梅田まで15分とアクセスがよいことから,市北部はベッドタウン,南部は工業・商業地域として機能している。
人口密度は1万人弱/k㎡で,ニューヨーク市と同規模の大都市だ。吹田研究は,1989年に吹田市住民台帳から性年齢階層別に1万2,200人を,さらに96年に3,000人を無作為抽出し,そのうち国立循環器病研究センターで基本健診を受診した者を対象に,循環器疾患リスクを検討しているコホート研究。
対象者は,89年抽出の一次コホートが6,485人,96年抽出の二次コホート1,329人,ボランティア集団546人で構成されており,現在は一次コ ホートを対象に研究を行っている。
食欲不振EN hombres
同氏によると,吹田研究の対象者は全国平均と比べ,各年齢層ともに血圧が低く,総コレステロール値が高い点が特徴。
これは,近畿地方で脳卒中死亡率が低く,心筋梗塞死亡率が高い傾向にあることを裏づけているという。
#血圧に基づいた脳心血管リスクはJSH2009と同様
吹田研究ではこれまで,女性(男性は60歳未満のみ)でメタボリックシンドローム診断基準と循環器疾患が関係していること(Hypertens Res2008; 31: 2027-2035),女性のみで腹囲と脳卒中発症が関係していること(Stroke2010; 41: 550-553)などを明らかにしている。
腹囲について,小久保氏は「腹囲を必須項目にすると,リスクにならない要因を引っ張り込んでしまう恐れがある。
一方で,現在の診断基準では太っていない人で血圧の高い人を見落とす危険性がある」と説明。
吹田研究では腹囲の心血管疾患発症リスクに対するカットオフ値が女性で80cmだったが,「腹囲が循環器疾患に及ぼす影響が非常に緩やかなため,他の地域では別のカットオフ値が出るかもしれない」とし,腹囲がエビデンスのある危険因子として世界のガイドラインに含められるかどうか検討していく必要があると訴えた。
また,わが国の高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)では血圧に基づいた脳心血管リスクを表のように層別化しているが,吹田研究でも,至適血圧+正常 血圧のリスク第一層と比べ正常高値血圧のリスク第二,三層,高血圧のすべてのリスク層で有意なリスク上昇が認められたという。
メリーランド州のエクササイズ減量
吹田研究によって初めて示されたエビデンスは多く,これからも数々のことが明らかになっていくだろう。
同氏は,同研究で解明された事実を各医師が患者の生活指導などに活用することを求めている。
出典 MT pro 2010.5.17
版権 メディカル・トリビューン社
Hypertens Res2008; 31: 2027-2035
Impact of metabolic syndrome components on the incidence of cardiovascular disease in a general urban Japanese population: the suita study.
Stroke2010; 41: 550-553
The relationship between waist circumference and the risk of stroke and myocardial infarction in a Japanese urban cohort: the Suita study.
<関連サイト>
吹田研究の結果に対する端野・壮瞥町研究からのコメント
<番外編>
「高血圧の日」について
毎年5月17日は"高血圧の日"
■世界高血圧デー
「世界高血圧デー:World Hypertension Day」は、国際高血圧学会の一部門である世界高血圧リーグにより、高血圧およびその管理に関する啓発を目的として、2005年に創設されたものです。
創設以来、その参加国は増え続け、2007年からは日本も参加し、合わせて25カ国以上が参加しています。
■世界高血圧リーグ(World Hypertension League)
世界高血圧リーグ(WHL)は1984年に設立以来、高血圧の危険性と高血圧がもたらす深刻な病気や合併症についての知識を一般市民に伝えるよう世界各国の団体に推奨し、予防と発見、治療に関する情報を提供しています。
WHLは国際高血圧学会 (ISH)の一部門で、現在81のメンバーと11のサポート・メンバーで構成されており、日本では日本高血圧学会がメンバーとなっています。
■啓発キャンペーン「ウデをまくろう、ニッポン!」
2007年5月17日の「世界高血圧デー」に合わせて行った「ウデをまくろう、ニッポン!」では、健康な生活を送るためには生活習慣の改善と日頃の血圧測定が重要という、高血圧の啓発を目的として、様々なイベントと情報提供活動を行いました。
5月17日の「世界高血圧デー」の日には、高血圧(140/90 mmHg以上)を適切に管理して、望ましい血圧値を維持することの重要性を啓発するために、千葉マリンスタジアムで、24時間以内に、どれだけ多くの人が一箇所で「ウデをまくって」血圧測定できるかというギネス世界記録.
またスタジアム以外の活動としては、首都圏の大規模スーパーマーケットでの血圧測定のイベントを行うとともに、キャンペーン期間中は、「ウデをまくろう、ニッポン!」啓発ポスターやインターネットの高血圧に関する情報提供ウェブサイトを通して積極的な情報提供を行いました。
日本高血圧学会と日本高血圧協会は、今後も「高血圧の日」のキャンペーン活動を主 催し、啓発活動を展開していく予定です。
<コメント>知らないまま5月17日は静かに過ぎて行きました。
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