<以下、M.D.への質問とその答え>
HIVとdrug依存・中毒というテーマを考えた時に、まず自分の中で最初に浮かんだ疑問は
①「以前からdrug依存・中毒に陥っている人がHIVに感染する傾向が強いのか、あるいは逆にHIVに感染した人が不安や恐怖などの精神的逃避からdrug依存・中毒に陥ってしまう傾向が強いのか」でした。
→ 答えは明確で、サンフランシスコ(アメリカ)においては前者が圧倒的に多いとのことでした。
drugによる多幸感、high tentionの状態からnon-safer sexや針の使いまわしを行い、HIVの感染が広がっていくことは確かに容易に考え得ることでした。サンフランシスコでは今やHIVはchronic diseaseのひとつといわれ、HIVが原因で死に至るcaseはまれとなっていますが、以前(1980年代)のようにHIV=deathを意味する時代であったら、後者のようなcaseもあったのではないかと想像します。
② 前者のような状況を打開する方法は?
→ 社会的な要因が多くなかなか根本的解決には至らないのが現状である。
健忘についての事実
特にHIV positiveでdrug依存・中毒に陥りやすい人は単に意思が弱いということではなく、遺伝的・生物学的な要素、家族背景(abuse等)、精神保健上の問題を抱える場合などが大きな要因を閉めることが多いということだと考えます。
③ drugから完全に離脱できるのはどのようなcaseか?
→ Methadoneを用いながらharm reductionをうまく行えたcase。
Self controlによって自力で離脱できるcaseは極めてまれである。
HIV positveで多種多様なdrugから自分の強い意思と宗教の信仰により離脱したJoeさんのようなcaseはまれなのだと思いました。Methadoneもオピオイドであり、当然耐性と依存性が生じうるもので、禁断症状は同量のモルヒネやヘロインに比べ緩慢で軽いが著しく長引くようです。ヘロイン中毒者の中には、ヘロインよりもMethadoneから抜け出すことのほうが難しいと感じる人もあり、Methadone維持療法では投薬によって症状が快方に向かうとは限らないため、投与は定期的に行われないように計画されることが多いとのことでした。
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④ drugから離脱してもまた時間が経てば逆戻りしてしまうcaseは多いのか?
→ 人によって個人差が大きく2‾3ヶ月後であったり5年後であったりさまざまだが、やはりもとの状態に戻ってしまうcaseが多い。
さまざまな差別をinternalizeせずにself-estimate(自己価値)を高めるようにもっていくharm reductionをしっかり行えるような体制の確立が重要と考えられます。それにはHIV program co-ordinatorの方のbackupが重要になると考えます。
⑤ 日本でも最近、drugをやる若者が増えてきているが、何か良い予防策は?
→ これも社会的な要因が大きく影響するが、低年齢層への薬物乱用汚染が拡大されつつある傾向を念頭に家族教育・学校教育での予防が重要となる。
しかし、むしろ我々大人・親・教育者(医療関係者も含む)自身のdrug乱用に対する無知と危機意識の薄さにこそ問題があり、そのことが今日のdrug乱用に拍車を掛けている面も否定できないと考えます。よって我々自身がもっと積極的にdrugのもつ怖さを知る必要があると考えます。
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⑥ drug依存・中毒患者と常に向き合って治療していくのは大変な仕事だと思われるが、Dr.としてのmotivationはどこにあるのか?
→ drug依存・中毒に陥っている患者さん達は心の痛みを持っている。医師としてそれを取り除いてあげたいと思うのが一番の望みだ。当たり前のことだが、患者さんが良くなっていくのを見るのが嬉しくてこの仕事に携わっている。
言葉でいうのは簡単なことだが、実際にはせっかくよくなった患者が再び逆戻りしたりして、つらいことも多いだろうと感じました。同じことが繰り返される状況でも常に前向きに取り組まれている姿勢を見習わなくてはと思いました。
<まとめ>
アメリカでも日本でもdrug(一部のdrugは除く)は勿論違法だが、drugに対する認識やdrug依存・中毒への対応はアメリカのほうが日本より進んでいるように感じています。それはすなわちHIVに対する認識にも同じことが言えると思います。drug依存・中毒に陥っている人々の多くがHIVに感染するという疫学的方程式の解答はこのサンフランシスコを見れば自ずと得られるような気がします。そしてそれは快楽を求める若者を中心にdrug依存・中毒者が増えてきている日本の状況を見れば、Methadone clinicのような施設を設け(まず、日本でもMethadoneの認可がおりることが先決ですが)、長期的離脱を図れるようなシステムを構築することが、すなわち今後このままでは増加の一途をたどるであろうHIVの感染率を少しでも下げることにつながっていくと思います。
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